年齢を重ねると、「最近便が出にくい」「お腹が張る」と感じる高齢者は少なくありません。
便秘は高齢者の約7割が抱えている問題と言われており、高齢者に多い悩みのひとつです。
また、高齢者を介護しているご家族も、頭を抱えるのが便秘の特徴です。
「医師から処方された下剤を飲ませたら、下痢になってしまった」
「なかなか便が出なくてつらそうだけど、どうしたらいいんだろう?」
という経験をした介護者の方もいるのではないでしょうか?
この記事では、看護師の視点から「なぜ高齢者に便秘が多いのか」「便秘を放っておくとどうなるのか」「便秘の効果的な解消法」についてわかりやすく解説します。
高齢者の便秘はなぜ起こるか?

便秘は、さまざまな原因が重なって起こります。
特に高齢者では、加齢に伴う身体の変化が大きく影響しています。
内臓の機能の衰え
加齢によって胃腸の働きが緩やかになるため、食べ物が腸を通るスピードが遅くなります。
その結果、便が腸内に滞留してしまいます。
便が腸内に留まる時間が長いほど水分が失われてしまうので、便が硬くなり便を出しにくくなります。
腸内環境の変化
高齢になると、善玉菌が減って悪玉菌が増える傾向があります。
腸内環境が乱れることで、腸の動きが鈍くなり、便秘を引き起こします。
食習慣
「食が細くなった」「柔らかいものばかり食べる」といった食習慣の変化も、便秘の大きな原因です。
食べる量が減れば作られる便の量も減り、便がなかなか外へ出ていきません。
柔らかい食事には食物繊維があまり含まれていないことがほとんどです。
食物繊維の不足は腸の動きを悪くし、便を溜め込みやすくします。
水分摂取の不足
高齢者は喉の渇きを感じにくくなるため、知らないうちに水分不足になりがちです。
水分が足りないと便が硬くなり、出にくくなります。
頻回にトイレに行くのが嫌だからと、水分摂取を控える高齢者も多いです。
運動不足・筋力低下
高齢者は活動量が低下するため、腸の動きも低下します。
また、腹圧をかける力も筋力の低下とともに弱くなっていくため、便を出すのに必要な腹圧がかけられなくなります。
腰の曲がった姿勢
加齢による姿勢の変化や腰の曲がりも、腹圧をかけにくくする要因です。
排便姿勢がとりにくくなることで、便が出にくくなります。
常に腰が曲がった状態だと、腸が押されて狭くなってしまうので、便の通りが悪くなります。
これって便秘なの?便秘の定義

医学的には、以下の場合に便秘と意義されます。
- 排便回数が週3回未満
- 排便時に強くいきまないと出ない
- 毎日出ているけど残便感がある
- すっきり出ない
ただし排便間隔は人によってさまざまなので、5日ぐらい出なくても大丈夫な人もいます。
反対に、1日でも便が出ないと気持ち悪い、お腹が張るという人にとって、毎日便が出なければ、便秘と言えます。
- その人にとってちょうど良いと感じる排便間隔の日数かどうか
- 残便感や便を出すのが大変といった症状があるかどうか
などを加味して、総合的に便秘かどうかを判断します。
便秘が続くと何がいけない?
便秘を放っておくとどうなるのでしょうか。
4つのポイントから説明します。
栄養状態の悪化と体力低下
お腹が張ったり、お腹に便が溜まり胃を圧迫したりすると食欲が落ち、十分な栄養がとれなくなることがあります。
その結果、筋力や体力が低下し、さらに便秘が悪化するという悪循環に陥ります。
免疫力の低下
腸には免疫細胞が多く存在します。便(老廃物)が腸に留まることで腸内環境が悪くなると、免疫力が下がって感染症にかかりやすくなることも。
合併症を引き起こす
便が長い期間腸にたまると、腸閉塞や痔などの合併症を起こすことがあります。
痔になるとお尻が痛いため長時間座っていられないなど、生活の質を低下させることにもつながります。
また、強いいきみは血圧を上げたり、その圧によって血栓が飛ぶこともあります。
血圧が上がることでさまざまな臓器に負担をかけますし、血栓が脳や心臓に飛んでしまうと、心筋梗塞や脳梗塞を起こします。
認知症の症状が強くなる
便が出そうで出ない、お腹が張るといった不快感は、認知症の症状(徘徊・多動・暴言・暴力・睡眠障害)を助長します。
便秘により排便が不規則だと、夜間に便意を催すこともあり、夜間の転倒リスクが高まります。
腸と脳は密接に関わっており、腸内環境の乱れは精神面にも影響するのです。
高齢者の便秘の解消法

便秘を解消するには、生活習慣の見直しが何よりも大切です。無理なく続けられる方法から始めましょう。
生活習慣を整える
- 朝起きたらコップ1杯の水を飲む
これにより腸の動きが活発になります。 - 必ず朝食を食べる
胃や腸に食べ物が入ることで、眠っていた腸が起き、動きが活性化されます。 - 毎日同じ時間にトイレに座る
特に認知症などにより便意が分からなくなってしまっている高齢者の方にオススメです。
出ても出なくても毎日同じ時間にトレイに座ることで、トイレに行くことを習慣化させます。 - 睡眠をしっかりとる
自律神経を整えます。腸の動きは自律神経と密接に関わっているのです。 - ストレスをためない
ストレスを発散させることも自律神経を整えることにつながります。
深呼吸をするだけでも効果があります。
このような生活リズムを整えるだけでも腸の動きが改善します。
食事
食事は便秘対策の最大のカギです。
便秘対策には、食物繊維・発酵食品・水分の3つをよく摂ることがポイントです。
食物繊維:ごぼう・きのこ・わかめ・ひじき・バナナ・アボカド・玄米など
便のかさを増やします。食物繊維は善玉菌のエサになるので、腸内環境を整え腸の動きを改善させます。
発酵食品:ヨーグルト・チーズ・納豆・味噌など
善玉菌を増やす効果があります。
水分:1日1,000〜1,500mlを目安に
水分が不足すると便が硬くなり出しにくくなります。
常温の飲み物や白湯はお腹を温め、腸の動きを促すのでオススメです。
「1日3食バランス良く+水分は少しずつでもこまめに」が基本です。
決まった時間に食事を摂ることで、体内サイクルを整え腸の動きを活性化することができます。
便秘解消体操
軽い運動でも腸の動きを促すことができます。
おすすめの体操を体勢別に紹介します。
- のの字にお腹のマッサージ
- 両手を胸の前で組んで上半身を左右にゆっくりひねる
- 両膝を抱えてゆっくり左右に動かす
- 腰から下を左右にねじる(肩と下半身が離れていくのがポイント)
いつでも「深呼吸・腹式呼吸」で腹圧を高めるのがポイント!
無理のない範囲で、毎日5〜10分でも継続することが大切です。
便秘薬を使う
生活習慣を整えても改善しない場合は、医師に相談して便秘薬の使用を検討します。
薬にはさまざまな種類があり、耐性のついてしまう薬もあるので自己判断で長期間使用するのは避けましょう。
便秘薬には錠剤・粉薬・ゼリー状のもの・漢方などさまざまな形態があります。
認知症で薬を飲ませるのが大変な高齢者や、飲み込む力が弱くなった高齢者でも、医師に相談すれば飲みやすいものを処方してもらうことができます。
まとめ

高齢者の便秘は、加齢による体の変化と生活習慣が大きく関係しています。
放っておくと体力や免疫力の低下、合併症などを招くため、早めの対処が大切です。
便秘解消の基本は、
- 生活リズムを整える
- 食事と水分を意識する
- 軽い運動や体操を続ける
この3つを無理せず続けることです。
「便秘ぐらい…」と軽く考えず、体のサインとしてしっかり向き合うことが大切です。日々の小さな工夫で、快適なお通じを取り戻しましょう。


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